明治11年、大金をエサに武技に自信のある者が集められた。集まった292人はそれぞれ首に番号のついた札を掛けられ、その札を奪い合い東京へ向かうこととなった。つまり、殺し合いである…。
病気の妻と息子を助けたくて参加した嵯峨愁二郎は少女が参加しているのを見て放っておけず、行動を共にすることにした。次々と現れる猛者たち。そこには愁二郎がかつて生活を共にし、義兄弟として育った弟妹の姿もあった。
「世界に届ける映画を作る!」と岡田准一さんがプロデューサーとして藤井道人監督とタッグを組みました。その物語に選ばれたのは今村翔吾さんの『イクサガミ』。
「蠱毒(こどく)」という名の殺し合いゲームだけでも凄まじいのに、義兄弟の確執や剣術の奥義、意外な黒幕、人と人の絆や信頼という要素まで絡まった、まさに「世界に通用する時代小説」です。
想像を超える超絶なアクションはもちろんのこと、日本の武士の心の機微を描く、とんでもなく壮大なドラマができあがることは間違いありません!
現在、嵯峨愁二郎を岡田准一さんが演じることしか発表されていませんが、今後キャストには大注目です。
【主なキャスト(敬称略)】
岡田准一:嵯峨愁二郎
小説『イクサガミ』のあらすじ(「地」巻まで)
明治11年、日本国中に「豊国新聞」という謎の新聞がばらまかれた。豊国新聞には、金10万円を得るチャンスを与えるので武技に自信がある者は5月5日午前0時に京都の天龍寺に集まれという記事が出ていた。
果たして真実なのか悪戯なのか…不安に思いながら、病気の妻と息子を救うために嵯峨愁二郎は天龍寺に向かった。
天龍寺に集まった人々に槐(えんじゅ)という男が説明するには、集まった参加者292人それぞれに番号が書かれた木札を渡し、その木札を奪い合えと言う。
6月5日までに東京を目指せと言うが、木札1枚を1点とし天龍寺総門を出るときに2点、東海道伊勢国関で3点、三河国池鯉鮒で5点、遠江国浜松で10点、駿河国島田で15点、相模国箱根で20点、武蔵国品川で30点持っていないと通過することができない。
途中で離脱することも首から掛けた木札を外しても失格。失格者は処罰される。東京に着くまでが前半戦、後半戦は東京にて繰り広げられるとのことだ。計算上最大で9人が東京にたどり着けることになる。
命を懸けて木札を奪い合う…つまり、殺し合いを意味する。逃げ出そうとした者も槐に歯向かった者も殺された。つまり処罰は処刑ということなのか…。境内は地獄と化した。
ゲームの名は「蠱毒(こどく)」。蠱毒とは百の虫をひとつの壺に入れ共食いをさせ、最後に残った1匹が神気を帯びるという大陸の呪術の一種だ。
愁二郎は目の端に12,3歳の少女を捉えた。少女に刀を振り下ろそうとした男を愁二郎は斬り捨て、少女の手を取って走り出した。少女は名を香月(かつき)双葉といった。
2枚の木札を手に入れて愁二郎と双葉はなんとか総門を出た。仲間になろうと言い寄りながら突然斬りかかってくる者や人の木札を横取りしようとする者。ここでは誰も信用できない。
愁二郎は「薊屋」という宿に双葉を連れて行った。主人の弥兵衛はかつて愁二郎に娘を助けてもらった恩があった。双葉は、天道流の指南役だった父の香月栄太郎が西南の役で亡くなり母はコレラに罹ってしまったこと、田畑を売ったお金ももう無いことなどを語った。
翌朝、愁二郎の部屋を訪ねてきた警察を名乗る男が襲いかかってきた。愁二郎は男を斬り伏せ、木札を奪った。騒ぎを聞きつけた警察が到着する前に、弥兵衛は愁二郎と双葉を逃がした。
次の宿で再び愁二郎を訪ねてくる者があった。警戒していると現れたのは天龍寺で1枚の木札を譲ってくれた柘植響陣という男だった。伊賀の忍者だったという響陣はまた1枚の木札をくれ、愁二郎に同盟を結ぶことを提案した。返事は3日後、四日市の「烏頭屋」という旅籠で聞かせてほしいと言って姿を消した。
雨が降る中、峠を越えようとした時、愁二郎と双葉に向かって矢が放たれた。敵は7人。愁二郎は斬りつけた男のうちの1人の木札を奪うと、男達が仲間の木札を奪い合っている間に、双葉と共にその場を去った。
先を急ぐ愁二郎と双葉に突然刀が斬りかかってきた。よけながら愁二郎は気付いた。愁二郎の義兄弟で唯一の女、衣笠彩八(いろは)だった。愁二郎と彩八が斬り合っていると後ろから追手が4人現れたので、愁二郎は彩八に東京で決着をつけようと言い、双葉を連れてその場を去った。
愁二郎は赤ん坊の時に五条大橋の袂で剣の師匠に拾われた。2番目に拾われたから愁二郎。全部で8人の同じ境遇の子どもが師匠の下で武術の指導を受けた。
愁二郎が修めたのは源平の時代に起源をもつ「京八流」と呼ばれる剣術。8人の弟子が9割9分まで同じことを学び、残り1分で8つの奥義を8人に分けて伝授するという。8つの奥義とは禄存(ろくぞん)、破軍、巨門(こもん)、貪狼(とんろう)、廉貞(れんじょう)、文曲、北辰、武曲。
愁二郎は武曲を修め、彩八は文曲を修めた。
8つの奥義を伝授された8人の弟子は殺し合い、最終的に全ての奥義を手にした1人が京八流の後継者となる。13年前、8人の義兄弟で継承戦が行われるという前夜、愁二郎は逃げたのだ。
追手から逃げているとまた目の前に弓矢をもった男が現れた。万事休すと思われたが、男が放った矢は愁二郎と双葉の頭上を越えていった。なんと男は愁二郎と双葉ではなく追ってきた4人の男に矢を命中させていた。
男はカムイコチャと名乗り、子どもは絶対に殺めないと言った。和人に奪われたアイヌの地を買い戻すために参加していた。
伊勢国関を越えて、斬りかかってきた男に愁二郎が対応している間に、双葉は2人の男に襲われた。それを助けてくれた男がいた。卑怯なことが嫌いで、仲間の汚名をすすぎ弔うために正しく戦いたいと話す男は菊臣(きくおみ)右京と名乗った。
四日市に着いた愁二郎と双葉は「烏頭屋」で響陣と合流した。愁二郎は響陣と同盟を組むことにした。
桑名宿から宮宿へ船を使うことにした。追い詰められると逃げ場がないので、できるだけ怪しい人物がいない船を選んで愁二郎と双葉と響陣は乗り込んだ。
1艘の船が愁二郎たちの乗る船に近付いてきた。3人の男が刀を持っていた。2人を簡単に叩きのめし首領格の男との戦いになった。男に引きずられて響陣が海に落ちていく瞬間、背後では医者とその従者を名乗っていた洋装の男が双葉に刺刀を向け、愁二郎にメスを投げてきた。
愁二郎は2人の洋装の男を組み伏せ、響陣は海賊崩れの男との死闘に勝ち船へと戻ってきた。洋装の医者の名は赤山宋適、従者は川本寅松といった。船の上で気絶していた男は狭山進次郎。愁二郎と響陣はこの3人を使って実験してみることにした。
寅松は木札をつけたまま、赤山は木札を取り上げて警察に引き渡した。「蠱毒」を途中で離脱すると処罰されると聞いているが、果たして警察に身を預けていても身の安全は保障されないのか?響陣は事の顛末を確かめた後に、進次郎を連れて愁二郎たちと合流することになった。
警戒しながら進んでいた愁二郎は目の先に貫地谷無骨という面倒な男を見つけた。無骨と対峙するのは厄介だと逡巡しながら振り向くと、そこに双葉の姿はなかった。男に猿ぐつわをかまされ双葉は連れ去られていた。
双葉を担いでいる男の顔を見て愁二郎は驚いた。愁二郎の義弟で「禄存」の使い手の祇園三助だった。そこへ菊臣右京が現れた。右京が無骨の相手をするので愁二郎に双葉を助けに行けと言った。愁二郎は三助を追った。
三助を見失った愁二郎は袖に紙切れを見つけた。「十日午前二時、戦人塚」とある。また宿場の看板には「戦人塚にて、京の八頭の竜を待つ」との張り紙があった。三助が蠱毒に参加している義兄弟を集めようとしているにの違いない。
夜中、愁二郎は戦人塚へと向かった。そこで三助から烏丸七弥が朧流の岡部幻刀斎に斬られたことを聞いた。朧流は京八流の継承戦から逃げた者を狩るために存在している。
愁二郎が逃げ出した後しばらくして師匠が亡くなり、義兄弟たちは山を下りてそれぞれの生活を始めた。七弥は佐賀で役人となり妻子もいたらしいが、幻刀斎は七弥だけでなく家族も全員惨殺していた。
彩八と化野四蔵(あだしのしくら)が現れた。継承戦を終わらせるべきだと四蔵が言い、4人の戦いが始まろうとしたとき、もう1人の人物が現れた。岡部幻刀斎だった。
愁二郎は驚いた。天龍寺で見かけた老人だった。幻刀斎は圧倒的に強かった。1対1ではとても太刀打ちできそうにない。愁二郎と四蔵が2人で幻刀斎に立ち向かい、三助と彩八は双葉を連れて逃げることにした。
幻刀斎は身を翻して三助たちを追い始めた。三助は「禄存」の奥義を彩八に伝え、幻刀斎を迎え討つことにした。到底1対1で敵う相手ではない。三助は、幻刀斎の弱点は骨の無いところだと「禄存」を使って彩八に伝えて果てた。
愁二郎は四蔵から、壬生風五郎もすでに幻刀斎の手にかかったことを知らされた。四蔵は、七弥から「廉貞」を風五郎からは「巨門」の奥義を託されていた。
池鯉鮒宿で愁二郎は彩八と双葉と合流した。戦人塚には現れなかったが蹴上甚六も蠱毒に参戦していることがわかっている。幻刀斎と戦うためには義兄弟全員で力を併せるしかない。
甚六の他に幻刀斎を殺るのに頼れそうな協力者を見つけるために、それぞれ別の道を進んで2日後の正午に浜松宿で集まることになった。
響陣が進次郎を連れて愁二郎と双葉に合流した。響陣が言うには、警察に突き出した赤山宋適と川本寅松は牢屋の中で殺されたとのこと。殺したのは警視局の人間だ。蠱毒の主催者は警視局と繋がっている。
札の点数を確認する監視者が現れた。進次郎は首にかかる自分の札以外は持っていない。どうなるかを確認する実験のためにここまで連れて来たのだが、双葉が進次郎を助けてほしいと懇願した。
愁二郎は持っていた札を進次郎に渡し、進次郎も関を通過することになった。最終通過者となった進次郎は、首にかけていた札の代わりに黒い札を与えられた。進次郎が保有していた点数とここまでに無効となった点数を併せた19点分の価値があるのだと言う。
ただし黒札は分けることはできない。再び最後の通過者となるとその時点で失格。残っている蠱毒の参加者全員に進次郎の居場所や19点札を持っていることが伝えられる。進次郎は狙われる…。先を急ぐ必要があった。
愁二郎は大久保利通に蠱毒のことを知らせることにした。愁二郎は継承戦から逃げ出したあと、嵯峨刻舟という名前で京都の薩摩藩の世話になり、大久保の護衛として働いていた。
岡崎宿の郵便局で大久保に電報を打とうとすると官吏証がないと無理だと断られた。愁二郎は仕方なく大久保の右腕である前島密に上申電報を送ることにした。愁二郎は蠱毒の概要を送った。前島とは浜松宿でまた改めて連絡を取ることになった。
斬りかかってくる者や拳銃で撃ってくる者、進次郎の19点札を狙って刺客たちが次々と襲ってくる。薙刀を使う女性・秋津楓にも助けられ、先へと進んでいった。
愁二郎たちの進む先で、金髪で青い目をした大柄の西洋人が三人組の男に囲まれていた。流暢な日本語を操る西洋人の名はギルバート・カペル・コールマン。ギルバートは怖ろしい怪力の持ち主であっという間に3人を制圧してしまった。
ギルバートが愁二郎に戦う意志を見せてきたため、愁二郎は戦いに乗ることにした。一進一退の攻防が続く中、倒れた男がギルバートに向かって吹き矢を放とうとしたのが目に入り、愁二郎は男を斬った。
戦意が喪失した愁二郎とギルバートは札を半分ずつ分けることにした。
イギリス人であるギルバートはアメリカ南北戦争に駆り出され、尊敬し慕っていたジャクソン准将が本国に見殺しにされたことに憤り精神を病んでいた。ギルバートは死に場所を求めて日本の薩摩藩へとやってきたが、コロリに苦しむ本国の家族を救うため蠱毒に参加していた。
浜松宿で四蔵と彩八と合流し、前島との約束の時間の正午に浜松郵便局へと向かった。前島からの電報が届いているはずだったが、そこに秘書の舟波一之介と粳間隆造を伴った前島本人が現れた。
前島によると蠱毒の主催者側も電報を使ってれんらくを取り合っているらしい。多くの電報が集まってきている本拠地は富士山麓の樹海の中にあると思われ、傍受した電報は現在解析中だ。
大久保は前島と並んで信頼を置いている警視局長の川路利良に富士山麓の本拠地を落とすように命じた。
前島宛に次々に進捗状況を知らせる電報が届き始めた。前島が持つ暗号を記した紙を響陣が読み解いた結果…、黒幕は警察内部の過激派ではなく川路であること、川路は大久保を討つつもりであること、警視局が浜松郵便局に乗り込んでくることがわかった。
川路は自らの尊厳ばかりを声高に叫んでは反乱や暗殺を企て、何の役にも立たない武士は滅びるべきだと考えていた。この意見に賛同する三菱、住友、三井、安田の財閥が出資したのであった。
時を置かずして警視局がやってきた。前島は大急ぎで大久保へと電報を打った。大久保に身の護るため前島と四蔵と舟波は馬で東京へ向かい、響陣が富士山麓の本拠地を衝くことになり、彩八は双葉を連れて郵便局を出た。
愁二郎の前になぜか乱切り無骨が現れた。愁二郎は火を放った。無骨と斬り合いながら愁二郎は無骨の右目が見えていないことに気付いた。無骨は義眼を放り捨てると手ぬぐいを右目を覆うように巻きつけると、さらに激しく愁二郎に斬りかかってきた。
愁二郎と無骨の間に焼けた瓦礫が落ちたすきに、愁二郎と進次郎は郵便局を脱出した。
大久保の身にも危険が迫っていた。罠にはめられ護衛のない馬車は20人もの敵に囲まれた。そこへ舟波と四蔵が到着したが人斬り半次郎の異名を持つ桐野利秋の前に舟波は倒れた。
四蔵が桐野の相手をし、なんとか大久保の馬車を別の道へと行かせたが、大久保の前には石川県士族が立ちふさがった。まんまと罠にはまってしまった。目的を達成した桐野は四蔵の元から去っていった。
映画の見どころと原作との違い
まさに「世界に届く日本の映画を」という目標にぴったりの物語。続きが気になりすぎてページをめくる手が止められませんでした。
京八流という特殊な奥義を操る剣術を映像で表すと言うのですから、この殺陣は半端じゃありませんよ!岡田准一さん無しでは絶対に成り立たないし、他のキャストも相当のアクションができる方ばかりになるはず。
明治維新直後の日本を描いた時代劇なので、日本の文化や風習、武士のあり方などが色濃く表れるのですが、ターゲットは日本のみならず世界なので、そこは日本をよく知らない外国人にも楽しんでいただけるようにアレンジされています。
登場人物は濃いキャラのクセモノばかり。歴史上に実在した人物までもが巻き込まれるのですから、とんでもないことが起こるのですよ。
ただただアクションに振り切って面白いだけのものを作るのは外国映画でもできる訳で、日本の映画のすごいところは、ここに人と人の絆や信頼を描いて心の揺れや機微を表現できるところです。
日本を代表するとんでもない作品ができる予感しかしません!
早く「人」巻が読みたい(>_<)
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