夏休み直前という中途半端な時期に転校することになってしまった中学2年生の宮原涼。転校先の中学校に挨拶に向かった日、一人の少女と出会った。同じ中学2年生の加納百合という名前の少女だった。
なんだろうこの既視感。少女にやっと会えた気がする。何度も夢に見ていた不思議な光景の中には、いつも星空を見上げる髪の長い少女がいた。彼女がその少女なんだろうか…。
いつも空を見つめていて「死」という言葉に敏感に反応する百合に、涼はなぜだか無性に心惹かれていた。少しずつ心の距離を縮めていく涼と百合。
だけど、百合の秘密を知ってしまった涼は、その事実を受け入れることができなかった…。
小説『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』で大切な人を失った百合のその後の物語です。
小説を読んだ人にはもちろん、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』を見た人にもぜひとも読んでいただきたい、感動の純愛小説です。
小説『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』のあらすじ
もうあと数日で夏休みだという中途半端な時期に、父親の転勤で転校を余儀なくされた宮原涼、中学2年生。
転校先の中学校に挨拶に出向きサッカー部の練習を見学しているとき、涼は1人の少女に出会った。目が合った瞬間、涼はなぜだか「やっと見つけた」と感じた。
少女の名前は加納百合。涼が転入したクラスにいた。
涼はいつも空を見上げてクラスメイトと距離を置いている感じの百合のことが気になって仕方がなかった。仲良くなった祐輔と聡太に聞いてみると、百合は以前は先生に反抗的な態度をとっていたけれど、最近大人しくなったのだそうだ。
夏休み明けの文化祭で、先日行った社会科見学についての発表をグループごとで行うことになり、涼はうまく百合と同じグループになって図書館で調べ物をする係にもなれた。
社会科見学はどこに行ったのか尋ねた涼に「特攻資料館」と答えた百合は、どこか悲しそうな感じがした。
放課後、サッカーの練習がしたりないと感じた涼は、グーグルマップで見つけた「百合ヶ丘公園」に行ってみた。サッカーボールが転がった先のベンチに百合が座っているのが見えた。百合の花に囲まれたベンチで、百合はまた空を見つめていた。
言葉を交わした涼は浮かれて、その夜またいつもの夢を見た。百合の花が咲き乱れる丘の上で座り込んで星空を見つめている女の子の夢。いつもは後姿しか見ることができないのに、その日の夢では、振り向いた女の子は百合だった。
ある日の朝教室に入ると、浅井の席に「死」とチョークで落書きがあり雑草が生けられた花瓶が置かれていた。見て見ぬふりをしてやりすごすクラスメイトを尻目に、百合は怒りを爆発させた。
「死という言葉を軽々しく使うな」百合はそう言いながら机の文字を消していった。百合の言葉は心の叫びのように聞こえた。
百合はまた「プロのサッカー選手になりたい」という涼の夢を笑わずに聞いてくれた。若い人が何の心配事もなく夢を抱けるのは幸せなことだとも言った。百合の心に大きな傷跡を残した「死」があるのだろうか。
夏休みに入って、グループ発表の調べ物をするために図書館に集まることになった。他のメンバーが用事で欠席することになり、涼は百合と2人で市立図書館に向かった。
特攻隊について話している時の百合はなんだか悲しそうだった。特攻隊員の多くが20歳前後だったことを知り、彼らの遺書を読んだ涼もショックを受けてやりきれない思いだった。
2人でハンバーガーを食べた後、百合ヶ丘公園に行って調べたことをまとめようということになった。
百合はお世話になったのに「恩返し」をしないまま会えなくなってしまった人がいるという話を涼にした。涼は「恩返し」はできなくても、もらった恩を次の人に送る「恩送り」ならできると百合に言った。
その日以来、涼と百合は互いに名前で呼び合うことにした。その日、涼はまたいつもの不思議な夢を見た。
百合が海を見たことがないというので、涼は前に住んでいた町に海を見に行こうと誘った。海を見ながら百合は70年前の日本に行ったことがあるという、不思議で悲しい話を聞かせてくれた。
そして百合は、初めて涼と出会ったとき「涼があきらの生まれ変わりだとわかった」と言った。百合のあきらとの思い出を聞けば聞くほど、涼の不思議な夢が同じ状況に感じられて、自分があきらの生まれ変わりだということが腑に落ちた。
その一方で、百合が好きなのはあきらであって涼ではない、死んだ人には勝てない…という気持ちが涼の心を支配し、「無理だ」と言葉を吐いてしまった。涼は百合の前から逃げた。
相変わらずサッカーを続ける涼は大学2年生になっていた。バイト先の居酒屋に中学の同級生・橋口がやってきたとき、百合の話になった。百合は自分のせいで好きな人とうまくいかなかったと橋口に話していたようだ。
百合のことを忘れるどころか、あの不思議な夢を見る頻度はどんどん増していき、百合への想いは強くなっている。
自分の器が小さすぎて百合を傷つけてしまったのに、百合は自分が悪いと思っていると思うといてもたってもいられなかった。
涼は「特攻資料館」へ足を運んだ。胸ポケットに百合の花を挿した20歳の「佐久間彰」を見つけた時、敵わないと思った。でも彰が百合宛てに書いた手紙を読んだ時、確かに自分が書いた気がした。
気が付くと涼は百合に「会いたい」と電話をしていた。
涼と百合は6年ぶりに百合ヶ丘公園のベンチで顔を合わせた。涼はあきらに嫉妬していたことを正直に謝って、改めて百合のそばにいることを望んだ。今は2人が出会ったことは運命なのだと、素直に受け入れることができた。
『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』の感想
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」を読んだ方、映画を見た方には絶対に読んでほしい続編です。
作者の汐見夏衛さんが14歳の百合をこんな形で放り出すわけにはいかないと描いてくださった、温かくて優しい物語でした。
前作『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』で心から好きになった人が特攻隊員として出撃したまま現代に戻ってきた百合。このままだと気持ちの整理がつけられなくて百合がかわいそう過ぎると号泣して読み終えたので、百合の気持ちが救われてほっとしました。
生と死に向き合おうとする百合の言葉は、「死」という言葉を簡単に使ってしまう現代の若者に鋭い勢いを持って投げかけられますが、それでも突き刺さるというより心にふんわりと降りてくる優しい気持ちがたくさん詰まっている感じがします。
涼が百合に話す「恩送り」という言葉も素敵な言葉でしたね。そんな気持ちがつながっていけば世の中がもっと優しくなれるのに。
大切な人と会えること、夢を持つこと…そんな当たり前のように思える日常は、全然当たり前なんかじゃないと。世の中が様変わりすれば日常なんてあっという間にひっくり返ってしまうことをウクライナ侵攻やパレスチナ情勢を見て知っているのに。本当は遠い世界の話なんかじゃないのに、自分には起こらないと漠然と信じて生きている…。
そんな現代人に是非とも鑑賞していただきたい映画であり小説ですね。
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