小説『星の子』今村夏子

2018年本屋対象にノミネートされ、芦田愛菜ちゃん主演で映画化も決まった今村夏子さんの話題作『星の子』。

決して難しい物語ではありませんが、たぶん読んだ後の感想が分かれると思います。

結論が描かれておらず、物語自体に大きな余白が残されていて、受け取る側にゆだねられているのもその要因かもしれません。

実際私も、1回目に読んだ時と2回目に読んだ時とでは、微妙に感情が変わっていました。読む人によって、読むタイミングによって読後感が変わる…不思議な物語です。

あなたはどんな感想を持つでしょうか。

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小説のあらすじ

林ちひろは生まれた時から病弱な子どもでした。全身に発疹ができて痒さのために眠れない日々を過ごしていたある日、お父さんが職場の人から「金星のめぐみ」という水をもらってきます。その水でちひろの体を洗ったら、なんと2か月で完治してしまったのです。

両親はその水を分けてくれた落合さんと、落合さん夫妻が信じる宗教にのめりこんでいきます。

それを必死で食い止めようとするのは、お母さんの弟である雄三おじさん。いくら話をしても聞く耳を持たないので、両親が信じる水を、公園の水道水と入れ替えて、騙されていることをわからせようとしますが、逆効果となり、ついには絶縁状態となってしまいます。

小学5年生のとき、5歳年上の姉・まーちゃん(まさみ)が家を出ていきました。まーちゃんは、両親があんな風になったのはちひろのせいだと言い、昔勇三おじさんが水を入れ替えるのを手伝ったと告白しました。

中学3年生の春、ちひろは赴任してきたイケメンの南先生のことを好きになってしまいます。2学期になってからはまともに授業を聞くこともせず、ずっと先生の顔を見つめて似顔絵ばかりを描いていました。

友達のなべちゃんとその彼氏の新村くんとの3人で、卒業文集のチェックをしていて遅くなった日、南先生の車で送ってもらえることになりました。家の近くの公園の前で車を降りようとしたとき「変なのがいるから、まだ外へ出るな」と先生に制されます。

見るとそこにはちひろの両親がいました。数年前にバザーで買ったお揃いの緑のジャージを着て、頭にのせたタオルに互いに水をかけあっていました。

翌日学校へ行くと、ちひろと南先生がドライブデートをしていたとうわさになっていました。困っている先生に、ちひろは「昨日、公園にいたのは両親です」と告白してしまいます。

祖母の7回忌があり、ちひろだけが出席した際、雄三おじさんから「高校へ進学したら、家を出てうちから通ってみないか」と提案されます。でも、ちひろは「このままでいい」と答えてしまいます。雄三おじさんは、それから何度もちひろの家を訪ねて、両親を説得して帰りました。

担任の先生がお休みになって、代わりに南先生が教室にやってきました。帰りのホームルームで南先生が話しているとき、ちひろは12枚目の似顔絵を完成させようとしていました。

あこがれていた南先生は、突然クラスのみんなの前で言葉の牙をむきます。「いつも俺の似顔絵を描いている奴がいる。その紙とえんぴつをしまえ。机の上の変な水もしまえ。」「学校は、ラクガキしにくるところでも宗教の勧誘をするところでもない。」

 

教会の研修旅行で「星々の郷」行ったちひろは、12月の寒空の下、お父さんとお母さんに挟まれて、いつまでも流れ星を見ていました。

 

小説の感想

物語自体は大きな起伏も事件もなく淡々とした感じで進んでいくのですが、読みながらずっとモヤモヤした気持ちを持ち続けてしまいます。

それはなぜなのかというと、ちひろの両親がおそらく「怪しい新興宗教」を妄信しているからです。

おそらく…というのは、物語はちひろの一人称で語られているので、ちひろが知っていること以上の情報は一切出てこなので、本当のところはどうなのかがわからないのです。

引越するたびに家はだんだん小さくなって、修学旅行に行くためのお金は叔父さんに借りて、法事に行ったときに出たお弁当を”ごちそう”だと感じて次の法事を心待ちにして…どう考えても怪しい宗教に吸い取られているとしか思えないでしょ。

ただそこで”怒り”ではなく”モヤモヤ”を感じてしまうのは、両親が心底ちひろを愛していて、ちひろも両親も決して不幸には見えないからなのです。

ちひろはひたすらに両親の愛情を受けて育ち、家族が幸せに感じているのなら、誰にも迷惑かけていないのなら、怪しい宗教でもいいんじゃない?と思わせるくらいの家族なのです。

いやいや、待て待て。修学旅行のお金も払えず親戚に迷惑かけてるし。あきらかにちゃんとご飯食べてないし。なにより、ちひろは学校で少し浮いてたりするし。ダメでしょこれ。いいかげん気付かなきゃ!とちひろに耳打ちしたくなります。

ちひろ自身は、成長するにつれて少しずつ違和感を感じていきます。それでも両親のことを愛しているので、突き放すこともせず必死で生きています。それはもう健気すぎるくらいに。

終わりの方で、優しいと思っていた南先生が言葉の牙をむくシーンがあり、平穏な物語の中で唯一緊張感が走る場面となっています。でもこれから先、ちひろはこのような場面に何回も出会うことになるのではないかと胸が痛くなります。

ちひろの両親を全面的に否定する気にも責める気にもならないけど、子どもは生まれてくる場所と親を選べないから…、せめてこれから先は選ばせてあげてと願わずにはいられませんでした。

たぶん最後は選ばせてあげるんだろうなぁと思えるラストで、少しほっとして読み終えました。

あなたにもぜひ読んでほしいなぁ。

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読むたびに読後感が変わってしまう不思議な小説です。こっちの心の状態によるのかな。
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