孤高の天才と称される漫画家、大橋裕之さんの初期の名作?迷作?作品集。
竹中直人さん、斎藤工さん、山田孝之さんの3監督で実写映画化されることになり、人気急上昇中の『ゾッキA』と『ゾッキB』
古本市場で使われる特殊用語で、安い値段でひとまとめにして売られる本のことを「ゾッキ本」といいます。
この漫画と出会ったときの衝撃は、今でも忘れられません。たぶん、わかる人にはわかるけど、わからない人には全然わからない…。
それでも、2度3度…と繰り返し読んでいるうちに、噛めば噛むほど味が出るするめのように…、いやいや万人受けするとは限らない酢昆布のように…、しみてきますよ。たぶん。
私はきらいじゃないよ。こういうの。
【主なキャスト(敬称略)】
吉岡里帆:前島りょうこ
松田龍平:藤村
森優作:牧田
九条ジョー:判くん
鈴木福:伊藤
あるようでないような…漫画『ゾッキ』のあらすじ?
短編集というか、独立した作品集です。それぞれに、あらすじがあるものもあれば、ないようなものもあって…。
初期の漫画で、大橋裕之さん自身も「絵が破綻している」けど「熱い」と語っておられます。
とにかくシュールで、不思議で、ちょっと怖くて、おもしろい(←デクレッシェンド)漫画なのですよ。説明むずかしい…。
『ゾッキA』23作品+書き下ろし1作品
『ゾッキB』15作品+書き下ろし1作品
赤字が映画化された作品です
ゾッキA | ・伴くん ・父 ・秘密 ・Winter Love ・プロレス ・オサムをこんなうさんくさい道場に通わせたくありません ・犬死くん(第1話) ・日本 ・旅 ・アルバイト ・光走族について ・風習 ・プレゼント ・全部燃やせ ・37才 ・小松製パン ・朝 ・判断 ・おっぱい ・雨の日 ・偉人 ・石鹸の香り ・殺人 ・遠浅の部屋から~2006逃避~ |
ゾッキB | ・マジシャン ・カントリーボーイ ・父 ・GOLD RUSH ・犬死くん(第2話) ・東京 ・見張り台 ・ゲマンの光 ・ライブハウス ・教室 ・クマ ・後悔 ・さみしさ ・スクープ ・快適 ・遠浅の部屋から~2006上京~ |
ゾッキC | ・シーン1 ・スーパーロンリー相田くん ・世界最古の電子楽器 静子 ・平田さん ・あの部屋 ・下駄 ・イモ虫女 ・ウォーキングドランカー酒田歩 ・眠り ・コンパクトディスクファンクラブ ・再会 ・カメラ ・マスダさん ・傘 |
主な作品のあらすじ(?)は…
伴くん(ゾッキA)
ある日突然「君の姉ちゃん美人らしいな」と牧田に話しかけてきた伴くん。姉ちゃんのことを知りたがり会いたがる伴くん。「姉ちゃんのパンツ、5万円で売ってくれ」と言い出します。
実は牧田に姉ちゃんはいません。ゲーセンで取ったカプセル入りのパンツを10回洗って乾かして伴くんにあげました。さらに思いを募らせる伴くん。しかたなく牧田は姉ちゃんを死んだことにしました。
姉ちゃんの仏壇に手を合わせに来た伴くん。遺影は中学校のときに好きだった本田さんの写真を使いました。
大学に進んだ伴くんは、なんとコンビニで本田さんに出会ってしまい恋に落ちました。何度も告白しては振られ告白しては振られ、ついに付き合うことになった伴くんと本田さんは、ついには結婚してしまいました。
「今度は俺がパンツを売ってもらう番だな」という牧田に、伴くんは「ふざけるな」と言いました。
秘密(ゾッキA)
「生き物はもしかしたら秘密が無くなると死ぬんじゃないか」というおじいちゃん。おじいちゃんには秘密が230個あるんだそうな。
Winter Love(ゾッキA)
俺は980円の寝袋と道端で拾ったエロ本だけを持って自転車で旅をすることにしました。
清水で会った漁師・ヤスさんの誕生日ケーキを一緒に食べて酒を飲んですごしました。浜松でウナギを食べて東京に帰ろうっと。
オサムをこんなうさんくさい道場に通わせたくありません(ゾッキA)
「なかよし空手」というチラシを見て息子のオサムを道場に通わせることにしましたが、来てみると「殺人空手」と書いてあります。
母は息子をやめさせることにしました。
そもそも強いのか?そんな疑問を投げかけてみると、「僕、パンダを殺したことありますよ。コアラだってありますよ。」と。
空手経験者の夫に相談すると、夫は「パンダとコアラ殺せる奴が一番あぶないんだよ」と言います。オサムも空手は楽しいと言うのでとりあえず続けることに…。
道場の前に置いてあった「パンダ殺し」の貸出用ビデオを見て、母はちょっと笑顔になりました。
アルバイト(ゾッキA)
客の来ない本屋でバイトしている僕。ある日、変な言葉を書いてレジ横に置いて帰った…。
その夜911同時多発テロが起き、世界中が大騒ぎになっていました。
次の日出勤してみると僕が置いて帰ったメモは横向きになっていました。僕はいつもより念入りに床のモップ掛けをしたのでした。
光走族について(ゾッキA)
80年代、名古屋に突如発生したヤンキームーブメント、光走族。
誰よりも強い光を放つだけで、スピード違反も無ければ爆音もない。行方不明のおばあさんを見つけたこともありました。
光走族のメンバーは、強い光を見すぎてみんな白い服を着た女の子が去っていく幻覚を見るようになって、やがて突然、光走族は姿を消してしまいました。
おっぱい(ゾッキA)
もしもおっぱいが肩に付いていたら、人ごみでおっぱいに当たる確率が上がるんだろうか?(4コマ漫画)
石鹼の香り(ゾッキA)
石鹸の香りをかぐと誘拐されたことを思い出してしまう…。(3コマ漫画)
カントリーボーイ(ゾッキB)
恋にあこがれるひきこもりの松井くん。週一でバイトに来ないかと声がかかります。おばちゃんばっかりの工場に、ある日、岡村洋子ちゃんというかわいい女の子が入ってきました。洋子ちゃんもひきこもりだと言うことです。
洋子ちゃんが男の人と歩いているところを目撃してしまった松井くん。人並みに傷つくようなことが自分に起こって、ちょっと嬉しい松井くんなのでした。
父(ゾッキB)
マサルの家は貧乏だったのでお父さんはどれだけ頼んでも遊園地には連れて行ってくれませんでした。
ある夜、お父さんはマサルを連れて母校を訪ねます。そして部室からサンドバッグを盗んできました。
夜中の学校探検はとても怖くて、見張りをしていたマサルはおしっこをもらしてしまいました。
外の水道でパンツを洗っていたら「パリン」と音がして、校舎の上の方から真っ白な幽霊が降ってきました。今度はお父さんもおしっこを漏らしてしまいました。
幽霊は「夏の終わりは切ないですね」と言って、出しっぱなしの水道の蛇口を締めてどこかへ去っていきました。
その1週間後、お父さんはお母さんとは別の女の人と出て行ってしまいましたが、10年後、サンドバッグが物干竿からちぎれて落ちた3日後に帰ってきました。
犬死くん(ゾッキA・B)
可愛い女の子が困っていたり、悲しんでいたりすると、笑顔を取り戻させなければという使命感に燃えます。なぜか顔をボコボコにされて顔面血だらけになりますが、可愛い女の子がわらってくるだけで満足なのでした。
うーん、要約して書いてしまうと単なる変態の話にしか聞こえないけど、なんか違うんよ。読んだ人にしかわからないシュールさなんです。
他の話は、とても言葉では説明できません。ぜひ読んで味わってみてください!
漫画にはないけど、映画にはあるあらすじ
原作漫画は作品集という形で、それぞれ、たまにつながっているものもあるけれど、オムニバス形式の独立した話です。
「石鹸の香り」「秘密」竹中直人
結婚生活が破綻し前島りょうこ(吉岡里帆)は実家に帰ってきました。
りょうこの祖父(石坂浩二)は石鹸で手を洗うたびに、幼いころ誘拐された記憶がよみがえってきます。犯人の手から漂う石鹸の香りになぜか安心感を覚えていました。
「生き物は秘密がなくなったら死ぬ」と言う祖父の秘密の数はなんと230個!
「Winter Love」山田孝之
自転車の荷台に寝袋を括りつけ「あてがないというアテを頼りに、とにかく南へ」と旅に出た藤村(松田龍平)。
夜道を歩く女性の後ろ姿に欲情し、軽く事故を起こして手の小指をケガします。それでも必死に自転車をこいで、やがてある漁港にたどり着きます。
初老のヤスさん(國村隼)をはじめ地元の漁師たちのお世話になり、再び旅を続けていきます。
「伴くん」「おっぱい」斎藤工
牧田(森優作)に初めて友達ができました。名前は伴くん(九条ジョー)。学校で話せる親友ができたことに嬉しくて仕方がない牧田。
ある日伴くんが牧田に「君の姉ちゃん、美人らしいな。」と言います。牧田に姉はいませんでしたが「いない」という一言が言えなくて、伴くんの妄想はどんどんエスカレートしていきます。
どうしようもなくなって牧田は「姉ちゃんは交通事故で死んだ」と、伴くんに嘘をついてしまいました。姉ちゃんの遺影の前で号泣する伴くん。遺影の写真は中学校のとき好きだった本田さんのものです。
「アルバイト」竹中直人
伊藤(鈴木福)は客のいないレンタルビデオ屋で退屈なアルバイトをしていました。彼の日課は、毎日カウンターの上のメモ用紙に「おはよう」と書き残すこと。
ある日急に思いついて変な言葉を書き残して帰ると、次の日そのメモ用紙が反対向きになっていました。自分しかこの秘密は知らないはずなのに?
「父」竹中直人
消息不明の父(竹原ピストル)とのある出来事を思い出していたマサル(渡辺佑太朗)。
貧乏なマサル少年(潤浩)は「遊園地に行きたい」とせがんでも連れて行ってもらえませんでした。
その代わり父がマサルを連れて行ったのは、かつて自分が通っていた高校。夜の学校探検で遭遇したのは幽霊(松井玲奈)?
その後、女を作って出ていった父が戻ってきました。
映画の見どころと原作との違い
監督それぞれに、担当するエピソードやキャラクターがあり、それがリンクするシーンでは、2人または3人でアイデアを出し合いながら撮影を進行したとのこと。
とにかく原作がハチャメチャなので、それを実写化した監督さん達の「ゾッキ愛」がすばらしい!
全部のエピソードがうまい具合につながって、リンクして初めに戻ってくる…お見事としか言いようがない!!
この話とあの話がつながる?!原作を読んだ人は驚愕するに違いありません。大御所とも言えるキャストをふんだんに贅沢に使った演出に舌を巻くとともに、彼らが醸し出す不思議なオーラにやられてしまいますよ。
「伴くん」の九条ジョーさんと森優作さんはもう、漫画から出てきたんではないかというくらいのハマり具合で感動すら覚えました。
吉岡里帆さんは盛大に牛乳噴き出すし、空手道場の師範代役の安藤政信さんは「さぶっ」しかセリフなくていろんな人が道場の前を通り過ぎるだけだし、コンビニ店員の板垣李光人くんはイケメンすぎるオーラが隠しきれてないし、とにかく俳優さんの無茶苦茶な使い方が絶妙すぎます。
大注目なのは、ピエール瀧さん。なんと「刑務所帰りの漁師」という役で、原作では『ゾッキA』の『Winter Love』というエピソードの中で「定男がシャバに出てくるってよ」と語られるだけの人物。
ピエール瀧さん、私は好きなので、逮捕には少なからずショックを受けたから、復帰は心から喜ばしいと思っておりますが…「刑務所帰り」の役て…オファーする方もされる方も、勇気あるわぁ。笑
そしてなんと!原作者の大橋裕之さんは伴くんと牧田が居酒屋で飲んでるシーンにしれっと出演されていますよ!
最後のシーンで牧田が前島りょうこに語るシーン。「誰かが頑張って守ってくれてる秘密のおかげで、世の中はうまく回ってるんじゃないのかな。」というセリフは映画オリジナルですが、神がかり的なまとめ方でしたね。
あんまり小さなことにこだわらないで生きていこう、人はみんなつながって生きていってるんだな、ってほっこりした勇気をもらえる素敵な映画でした。
この映画は、ぜひとも原作を読んで鑑賞してほしいです!原作がそのまんま映像になっている完成度の高さにも驚くけど、みんながつながってることにほっとしますよ。
映画『ゾッキ』視聴方法
動画配信サービス
裏ゾッキは未公開映像と裏話を集めたものです
【2024年5月22日時点の情報となります。 配信が終了している可能性がございますので、オフィシャルサイトにて必ず最新の情報をご確認ください。】
動画配信サービスを利用するには会員登録(有料)が必要です(無料お試し期間有!)
ゾッキ | 裏ゾッキ | |
U-NEXT | 見放題 | 見放題 |
amazon prime | レンタル 100円(高画質) | 見放題 |
music.jp | レンタル 440円 | – |
購入
HD(高画質)ダウンロード版 2038円
Blu-ray -円 / DVD 3318円
【価格は2024年5月22日現在】
Blu-ray -円 / DVD 3545円
【価格は2024年5月22日現在】
『ゾッキ』を電子書籍で!
A,B,Cはそれぞれ続いているという訳ではなくて、作品集という形です。
【2024年5月22日時点の情報となります。 オフィシャルサイトにて必ず最新の情報をご確認ください。】
ゾッキA,B | ゾッキC | |
U-NEXT | 1287円/巻 | 1386円 |
amazon prime | 1200円/巻(Kindle版) 1430円/巻(紙の単行本) |
1300円(Kindle版) 1540円(紙の単行本) |
漫画全巻ドットコム | 1287円/巻 | 1386円 |
Booklive | 1287円/巻 | 1386円 |
コミックシーモア | 1287円/巻 | 1386円 |
honto | 1287円/巻 | 1386円 |