松坂桃李さんが娼夫を熱演し話題になった『娼年』には、続編があります。
『娼年』の最後で Le Club Passion は警察に摘発され、御堂静香は逮捕されてしまいました。
空中分解してしまった Le Club Passion は、咲良とリョウとアズマによって1年後に再開されます。
再開されてからの物語が『逝年』に、7年後の物語が『爽年』に描かれています。
まずは『娼年』を鑑賞してね!
続編小説『逝年』のあらすじ
御堂静香が逮捕され営業停止してしまって1年後、咲良とリョウとアズマが再び「 Le Club Passion 」を再開させた。
リョウの最初のお客さまはトモミ。3年前に莫大な財産を遺して夫は他界していた。後ろから胸を攻められるのに弱いのは変わっていない。
トモミと一夜を過ごし翌朝ホテルを出ると、そこにメグミが現れた。リョウの生きがいでもあった「Le Club Passion」を壊した張本人だ。
メグミは自分も娼婦として仕事をして、リョウが言っていた「やりがい」を確かめたと言い、償いをさせてほしいと「 Le Club Passion 」再建の手伝いを申し出た。
咲良とアズマはすでに了解済みらしく、知らないのはリョウだけだった。
子どもを産んでから9年以上夫とはセックスレスの生活を送っているというチサトとの仕事が終わると、リョウは新宿二丁目へと繰り出した。
人気のバーテンダーがいると噂の「POLAR BAR」を訪れ、アユムという青年と会った。アユムは女性の体の中に男性の心を持つ「性同一性障害」だった。
リョウはアユムを娼夫としてスカウトしたいと言った。アユムは、女性の体に閉じ込められている自分には女性を満足させるセックスはできないと拒んだが、とりあえず「情熱の試験」を受けてみることになった。
アユムの指で咲良は何度かエクスタシーを迎えた。アユムは「Le Club Passion」の3人目の娼夫として働くことになった。
リョウにはミサキという常連客がいる。ミサキは「Le Club Passion」では「女スパイ」と呼ばれていた。リョウでさえ完全な暗闇でしか会ったことがなく素顔を見たことがないのだ。
8回目の指名でリョウはミサキの素顔を見た。顔から胸にかけてそばかすがあった。ミサキは好きな人ができたと語った。
ミチカという38歳の女性は毎回決まってパートナーが浮気をしているときにリョウを指名してくる。しかし話をするだけで体に触れることはない。
アユムの仕事がばれて両親が話をするために乗りこんできた。父親はアユムの性同一性障害について一切の理解を示すことなく、女性として生きていくことを望んでいた。
子どものころから苦しみいじめられ続けてきたアユムは、ありのままの自分を「普通」に受け入れてくれるクラブだけが自分の居場所だと涙ながらに訴えた。
アユムの苦しみに耳を傾けた父親はリョウにアユムを託すことを認めた。アユムと父親は息子と父親のように一発ずつ殴り合って別れた。
IT企業の社長をしているレイコは120キロで飛ばしている車の中でリョウに攻められるのが好きだ。ところが横浜の隠れ家に着くとその立場は逆転するのだった。
メグミとアユムは真剣に恋をしていた。アユムの性同一性障害のことも娼夫という仕事もすべて受け入れて、メグミはアユムのことを好きになっていた。
御堂静香は獄中でAIDSを発症していた。刑期を終え医療刑務所から出てきた彼女はやせ細り余命数か月…。
リョウは御堂静香の古くからの親友だというヨーコから指名を受けて会った。互いに御堂静香のことを思い悲しいセックスだった。ヨーコからはあきらめずに御堂静香の残りの人生を素敵なものにしてほしいと言われた。
かつてリョウは、HIVキャリアを理由に御堂静香に拒まれた経験がある…。しかし余命わずかな彼女とどうしても結ばれたいと懇願した。
#娼年
ニューヨークで開かれる北米最大の日本映画祭・JAPAN CUTSでの上映が決定している本作。IndieWire誌が選ぶ「JAPAN CUTSで観るべき5本」に選ばれました!
『娼年』という作品、リョウくんの優しさが、たくさんの方に届きますように。https://t.co/XJXqdUtaWT pic.twitter.com/wTAYTzC9VW— 『娼年』公式 (@shonen_movie) July 19, 2018
HIVウイルスは血液の接触で感染する。御堂静香の体に傷はないか念入りに調べ、咲良の厳重な監視の元、ついにリョウと御堂静香は結ばれた。
女性としての最高の喜びを感じ、2週間後御堂静香は静かに息を引き取った。
7年後を描いた『爽年』のあらすじ
リョウが娼夫になって7年。女性の声なき声に耳を傾け、心の奥底の欲望に寄り添いそれを開放するというスタイルは変わっていない。
もはやそれはリョウの天職ともいえる才能で、数々の女性を呪縛から解き放ち、生きる喜びを与えるのだった。
初めてのお客さま、トモミの紹介のセリナ。仕事に一生懸命になるあまりに女性としての生活を両立できなかった。40歳を過ぎて処女を捨てる決心をし、その相手にとリョウを選んだ。
メグミは2年前に通信会社のエンジニアと結婚した。アユムとは続かなかった。最初こそのろけていたけれど、今ではセックスレスに近い状態だと嘆いていた。
常連客から助けてほしいと言われ会うことになったノン。父親のDVによって男性恐怖症となってしまっていた。リョウは恐怖と緊張で固まったノンの体と心をほぐすのに4か月を有した。
ミズホという女性はアセクシャル、つまり無性愛者だった。これまでに会った中でも抜群に美しい女性だったけれど、性欲というものを一切持たなかった。そのせいで離婚も経験している。
性的な関係を一切持たずに、ただ単に男性とのデートを楽しみたいというミズホの要求に応えるのがリョウの仕事だった。
飲食店を経営する30代後半のバジル。バジルの性感帯は口の中にあった。リョウのキスと指だけで、バジルは2桁のエクスタシーを迎えた。
『娼年』にも登場した70歳を超えた老女は、7年間リョウによって女性としての喜びを与えられ、病床に至ってもリョウに癒され、静かに息を引き取った。
夫は大企業の取締役、専業主婦のノエル。子育てがひと段落して50歳を超えて性を開花させた。
下着の代わりにロープで体を縛りその上からワンピースを着て、コンサートにディナーを楽しみ最後の仕上げはホテルへ。リョウを1日買い取って素敵なクリスマスを過ごした。
女性の心の声に耳をかたむけることにやりがいと喜びを見出してきたリョウももうすぐ30歳。最近は娼夫という仕事がいつまで続けられるのかということを考えるようになった。
そんなある日、咲良から「妊娠」が告げられた。仕事を抜きにした自由なセックスを時々楽しんでいた2人は、これを機に結婚することになった。
突然の警察からの電話で、アズマが亡くなったと告げられた。
体を痛めつけられることが快感だったアズマに一体何があったのか。女性に首を絞められて亡くなっていた。
続編『逝年』『爽年』を読んだ感想
『娼年』の映画を見た方!小説かコミックで読んだ方!ぜひ、続編を読んでいただきたい!
『逝年』では「性同一性障害」や「AIDS」といった様々な性とともに、生死観にも踏み込んでいます。
『爽年』では、さらに性の悩みを解放できないで苦しんでいる女性たちが次々と登場し、ついにはアズマが…。
登場人物たちは、女性男性を問わず、自分の性を開放することができず、心に闇を抱えています。
何が正解なのかもわからない世界。
性にまつわる話は、私たちの生活と切り離すことができないにもかかわらず、どうしても人前で話すのはタブーとされがちです。
みんな呪縛から解放されて幸せになることだけを願っていた…、そしてリョウはただひたすら解放してあげたいと願っていた。そんな物語だと感じました。
本当は、松坂桃李さん主演で続編映画ができれば一番いいのでしょうが…、個人的には無理じゃないかなぁ…というか映像化しないでほしいと感じています。
『娼年』で描かれていた登場人物たちの性癖も、様々な形で相当インパクトがあるのですが、小説を読むより映像で見るとどうしてもセックスという行為自体を生々しく感じてしまいます。
性をテーマにした映像は、強烈なインパクトを残した一作で、世間に何かを投げかけることができれば充分なんじゃないかと。2作目3作目に走ると、見え方が変わってきてしまう気がします。
『娼年』は、演じる方も、見る方も、おなかいっぱいの衝撃的な作品だったので、続編はぜひ小説かコミックでお楽しみいただきたいと思います。
登場人物たちが自分の求める「性」「快楽」を楽しむ姿だけでなく、そこに至るまでの苦しみや違和感などにも目を向けると世界の見え方が違ってくるのかもしれませんね。
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